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情報検索行動における制約効果の時系列分析

有田 隆幸(2015年度修了)

今日では, web 検索システムの技術の発展により誰でも, 様々な情報を手に入れる事が可能になってきている. 一方で, 検索環境に制約を設ける事でユーザに良い影響を与え, 情報 検索行動を向上させようとする研究も徐々に増えてきている. 先行研究では, 制約を設ける事で, ユーザの意識・行動・成果に影響を及ぼすことを明らかにした. 同時に, ユーザの 行動や成果に時系列分析を行い, 行動・成果が作業中に変化していく事も明らかにした. しかし, ユーザの意識の時系列分析は行われておらず, ユーザの意識が作業中に変化してい るかは明らかにされていない. また, 既存の研究では, 異なる種類の制約間でユーザに与える影響を比較することは行われてきたが, 量的に表現可能な同種類の制約の強度の比較を 行っている研究はなく, 制約の強弱によってユーザに与える影響はどのように変化していくかは明らかにされていない.

そこで, 本研究では意識面を含めた時系列分析と, 量的に表現可能な制約の強弱が及ぼす影響の調査を行った. 得られた知見を基に, ユーザを支援するタイミングや適切な強度の制約を見極め, 情報検索行動の向上に寄与する事を研究目的とした. 本研究では, 筑波大生計 30 名を対象に被験者実験を行った. 実験では, 検索クエリの入力文字数と結果文書表示数に対して強弱が異なる制約を設定した 5 つの条件を用意し, 実験参加者全員に各条件を 1 回ずつ 10 分間のタスクを計 5 回行ってもらった. タスク中に収集したログデータとアンケートから, ユーザの意識・行動・成果に与えている影響を分析した. ユーザの意識に対する時系列分析の結果, 制約が意識に与えている影響はタスク序盤に少し観測されたもののタスク中にほとんど変化していないことが明らかとなった.また, 制約の強度が強いほどユーザの意識・行動に影響を与えていることも明らかとなった.そして, ユーザは検索戦略・行動を変化させることで強い制約の条件時であっても, 制約の弱い条件時と同程度の成果を挙げられることが明らかになった.

今後は, 強い制約を設けられた時にユーザがとる検索戦略・行動を手法として確立し, 通常時の情報検索行動の向上や教育の場における情報リテラシーの向上に寄与することを目標としていく.


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