協調的情報検索作業における役割分担の効果
今津 茉莉花(2010年度卒)
近年ツイッターやスマートフォンなどIT技術の発達で、ますます手軽にコミュニケーションをとることが可能となった。人はそういったツールを用いて頻繁に様々な情報を交換、共有している。協調的情報検索は、問題解決や学習・業務活動など目的を共有した集団が行う。一般的に我々は、協調作業が単独作業の集合よりもよい成果を上げると考える傾向がある。しかし、単独よりも集団の作業の質が落ちることもある。これは、Social Loafing(社会的手抜き)が一要因となっている。一方で、協調作業の効率をあげるために役割分担という手法が提案されているが、協調的情報検索における効果についてはよくわかっていない。そこで、本研究では役割分担をすることで各メンバーの目標をはっきりさせ、それがSocial Loafingの軽減に繋がり協調的情報検索の効率をあげることができるのではないかと考えた。そしてH1:役割分担をすることで協調的情報検索の効率があがる、H2:役割分担をすることでSocial Loafingは減少する、という二つの仮説を立て、その検証を行った。
本研究では、被験者実験を行った。24組のペアに一週間程の海外旅行の計画を立ててもらい、作業内容や二人の作業の様子を観察した。H1を検証する為に、閲覧ページ数など個々の作業量や、日程の確定率など計画の質を分析した。また、二人の談話数や談話レベルから役割分担の効果を見た。そして質問票で自由記述をしてもらい、被験者の意識を分析した。H2を検証するために対人信頼感尺度による分析や、個々の作業量の比較をした。
実験の結果、H1において役割分担をしたグループは時間への配慮が高く計画の実現性が高まり、より少ない検索作業量で計画書を作成できるなど役割分担が協調的情報検索の効率を上げる効果が見られた。また、役割分担をしたグループの総談話数や高度なレベルの談話数も多かったことから、役割分担がコミュニケーションを促進させる効果も見られた。談話数が増えたことで、作業に関する情報交換や共有が多く行われたと考えられる。更に主観評価の分析から、役割分担ありのグループでは各々の役割を意識していたことがわかり、目標をはっきりさせる効果が見られた。H2では、役割分担とSocial Loafingの関連性を示す明確な証拠は得られなかった。しかし、役割分担をしていないグループの個々の作業量をペア内で比較すると、作業量の多い者と少ない者で2極化の傾向が見られた。これらはSocial Loafingの影響である可能性も考えられる。
本研究によって、役割分担が談話のレベルを上げ、協調的情報検索の効率をあげる効果があることがわかった。今後さらにSocial Loafingを軽減する方法を考案していきたい。更に、役割分担なしのグループ内で作業量に差があった原因の追及もしたい。また、3人以上のグループにおける役割分担の影響を見る研究も必要となる。