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Q&Aサイトの質問における多重表現の効果

鈴木小織(2010年度卒)

最近、Q&Aサイトの利用は増加してきている。Q&Aサイトとはユーザー同士で質問、回答し合うコミュニティサイトを指し、個人の状況に特化した質問や意見を求める質問ができるという特徴がある。Q&Aサイトを対象とした研究にはベストアンサーを求める技術的 研究が多くあるが、いかに効果的な質問を形成するかに関する研究は少ない。一方で、情報検索では多重表現という概念がある。多重表現とは一つの物について様々な角度から見た情報を付与する表現方法である。このような多重表現がクエリ形成に有効的なことを示した研究はあるが、Q&Aサイトの質問に多重表現が用いられた研究はない。しかし、質問者の背景情報を質問に加えるこ.とができるQ&Aサイトでは、多重表現を用いて表現することは有効的なのではないかと考えられる。そこで、本研究では多重表現を用いた効果的な質問の表現方法を示すことを目的とし、それを調べるため被験者実験を行った。

実験では、被験者にそれぞれQ&Aサイトに投稿する6個の質問を考えてもらい、質問は事実を聞くような情報タイプの質問と意見を求めるような議論タイプの質問を使った。多重表現の効果を調べるために背景情報を「タスク」、「考え」、「状況」、「属性』、『制限」の5つに分類し、基本質問にそれらを追記してもらうことで、どの背景要素が多重表現として組み合わせると効果的なのか調べた。被験者に作成してもらった質問をQ&Aサイトに投稿し、集まった回答を質問作成した被験者に見せて評価指標に従ってそれぞれの回答を評価してもらった。

46人の被験者が作成した276個の質問に対し、合計930個の回答が得られた。この回答を分析した結果、5つの背景要素のうち「属性」を加えた多重表現をすると両方の質問タイプで新規性の評価を上げた。また、情報タイプと議論タイプでは背景要素の影響が異なっ た。情報タイプでは属性の他に「考え」を加えると親切の評価を上げ、議論タイプでは『タスク」を加えたときに満足と主題性、「状況」を加えたときに主題性と長さの評価を下げた。このように実験から、Q&Aサイトの質問における多重表現の効果が確認され、またその効果が質問タイプによって異なることが明らかになった。

以上の分析から、本研究ではQ&Aサイトの質問に加えるべき要素、避けるべき要素を示すことができた。今後の方向性として、背景要素をより簡単で効果的に記述できるような入力支援を行うインタラクションデザインを考案し、質問作成を容易にすることが考えら れる。


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