Web上の情報探索におけるタスクの切り替わりに関する研究
福澤糧子(2011年度卒)
我々は、しばし意図せず有益な情報に出会うことがある。このような偶発的な現象を表す概念としてセレンデイピテイがあり、近年、注目の集まっているテーマである。
このような偶発的な現象の研究課題の1つは、予測が容易でないこの現象を実験環境の中でどのように捉えるかである。偶発的であるためにその理解は難しい。そこで、本研究では、情報探索の分野でこのような偶発的な現象が、あるタスクに従事している際にきっかけを境として従事しているタスクを中断し、他のタスクを実行する現象であるとされていることから、マルチタスキングを背景とした現象であると考えた。そして、マルチタスクキングの切り替わりのきっかけを理解することが、偶発的な現象の理解につながると考えた。タスクの切り替えを実験環境の中で捉える手法に関する先行研究では、検証されているタスク切り替えの文脈が限られており、さらに、与えられたタスク環境での検証である。よって、マルチタスキンクにおける切り替わりを行動分析を通して理解すること、切り替わりとタスクの関係性を自主的な探索により明らかにすることを研究目的とした。
被験者実験を大学生、社会人、48人に対して行った。実験方法は、45分間インターネットを用いて個々のタスクを自由に実行してもらい、タスクの切り替わりも自由に行ってもらった。作業中、タスクの切り替えを行う際には随時、従事しているタスクの重要度や緊急度などについてアンケートに答えてもらった。また、作業終了後、作業中のタスクの切り替わりについてpostsea1℃h mterviewを行った。
実験より得られたデータを統計的に分析した結果、以下のようなことが分かった。まず、偶発的な現象が、従事しているタスクを中断して、別のタスクを行う現象であることから、直前のタスクの達成度(途中、達成) によって、切り替わりの文脈に差があるか調べた。結果、○○という興味深い言葉を見つけてや、△△という画像を見て、といったように、作業対象のメディアから影響を受ける傾向にあり、その場合、直前のタスクの緊急度が低い傾向にあることが分かった。また、新しいタスクの発生も偶発的な現象の一端となる可能性を持っているのではないかと考え、従事したタスクの新規性について分析した結果、新しいタスクが発生する場合は、直前のタスクの重要度が高く、緊急度が低い傾向にあると分かった。さらに、タスクの発生について、埋め込まれた情報以外にもタスクを意識する要因が存在することが分かり、それらの要因を基にタスク意識過程も類型化した。
今後の方向性として、今回の実験で得られた知見をもとに、実験環境の設定を見直し、セレンデイピテイイのような偶発的な現象の理解に取り組んでいくことが挙げられる。