コンテンツにスキップ

クチコミレビューにおける入力フォームの効果

岩井麻美(2011年度卒)

クチコミやレビューといった、サービスや商品に対する消費者の感想や意見の重要性が叫ばれてから久しい。最近では、twitterやfacebookなどのSNSによって人々は簡単にコミュニケーションをとることが出来るようになった。このような環境下では、サービスや商品を購入する際に、消費者は企業による広告のみならず、ますますクチコミを参考にする傾向にある。このような状況を踏まえ、各研究機関ではクチコミから有用な情報を抽出する方法や既存のクチコミをどのように扱うかという点に関する研究が盛んに行われている。一方で、消費者の購買の意思決定に役立つクチコミの生成支援に関する研究は少ない。

そこで、本研究ではクチコミを生成する際の入力フォームに注目し、一般的に用いられている自由記述形式入力フォームと、記述する内容をこちらで示唆する質問形式の入力フォームを比較することで、クチコミレビューの有用性への効果を検証した。具体的には、 H1:質問形式の入力フォームはレビューの有用性を向上させる、H2:質問形式の入力フォームはレビューの書きやすさを向上させる、という二つの仮説をたて、検証を行った。

仮説を検証するために2回の被験者実験を行った。一回目の実験は、24人の被験者に対して、自由形式の入力フォームと質問形式の入力フォームを用いてクチコミレビューを生成してもらい、それぞれの書きやすさに関するアンケートを行った。二回目の実験では、 別の24人の被験者に、一つ目の実験で生成されたレビューを評価してもらい、質問形式の入力フォームで用いた指標に対する有用性の評価を行った。

1回目の実験の結果、質問形式の入力フォームの効果として、「レビューの文字数が増加すること」「レビューに含まれる指標が増加すること」がわかった。また、H2においては、自由形式の入力フォームの方が書きやすいという結果となった。

2回目の実験の結果、Hlにおいては、「文字数の増加」は、レビューの有用性に対して、ポジティブな影響を与えるが、一定の文字数を超えるとネガティブな影響を与えることがわかった。また、ポジティブやネガティブな影響を与える指標を定性的に明らかにした。H2においては、アンケート調査から執筆する指標の柔軟な選択や順序付けが、質問形式の入力フォームの書きやすさ等の向上に役立つ可能性があることが示唆された。

本研究によって、入力フォームの形式がレビューの有用性に影響を与えることがわかった。しかし、場合によっては有用性を損ねる場合もあるということも分かった。今後はより多様な入力フォームのデザインを考案し、その効果を検証すること、入力フォームのデ ザインを改良し、有用なレビュー生成を支援する入力フォームの提案を行いたい。また、宿泊施設やレストランなど無形のサービスに対するレビューにおける入力フォームの効果を検証することなどが考えられる。


卒業論文に戻る