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協調検索体験が情報検索能力に与える影響

川口 晃平(2012年度卒)

現在、ほぼすべての教育現場にコンピュータおよびインターネットが導入されており、それらに関する知識や能力の重要性はますます高まっている。その中で、情報検索は Webページの検索等で不可欠なものとなっており、高い情報検索能力を有する学生は、より短い時間でより質の高い学習作業を行うことができると考えられる。この情報検索能力は、日頃どれだけコンピュータを使用しているかという個人の経験の要素に依存している傾向にあるとされている。そこで、他人の検索体験を観察する、または他人と検索体験を共有することによって、新たな検索スキルを学ぶことができると考えられる。そのような他者と行う検索手法として、本研究では、1つの目的を共有し複数人で情報検索を行う協調検索に着目した。協調検索によってどのように情報検索能力が変化するかを実験を行った結果から分析することにより、よりよい検索様式を探求する。

本研究では、利用実験によって実験参加者に3つのWebページ検索タスクを計3回行ってもらう。その方法は以下の通りである。まず1回目は1人で検索を行ってもらい、タスク完遂までの時間や、成功度の自己評価から情報検索能力を推察する。その後、2回目は協調検索と単独検索という2つの検索様式による検索体験を行う。そしてその後、約1週間の間隔を空け3回目を行う。この3回目はすべての参加者に1人での検索を行ってもらうもので、この結果を1回目の検索の結果と比較、分析することにより、2回目で行った検索様式の違いが 3 回目の情報検索能力にどのような変化を与えたのか、また、それはなぜ生じたかを明らかにするという設計になっている。

利用実験の1回目と3回目の検索の結果を比較すると、2回目の検索が協調検索であった実験参加者は 3 回とも単独検索であった参加者と比較して、タスク完遂時間に有意な短縮が見られた。これは協調検索を行うことによってその後の検索にも影響が与えられ、タスク完遂時間の短縮につながるということを示していると考えられ、本研究の仮説を支持する結果となっている。さらにタスクの種類によって結果の傾向は異なり、このことから、タスクの種類により適した検索様式があることが明らかになった。

今回、利用実験によって仮説が支持されたが、実験参加者の学類や学年などに偏りがあるなどの問題点もあり、今後それらを解消した研究が行われることが期待される。また、今回は明らかにできなかったタスクの種類による結果の差異を、クエリログや発話の録音・録画等も利用するなどしてより詳細に分析し、情報検索教育に活用する研究も期待される。


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