サービスリカバリーが顧客に与える影響 -飲食店の事例を中心に-
茅野 美智子(2012年度卒)
サービスリカバリー(以下SR)とは、「サービスの提供者がサービスの失敗に対してとる行動」(Gronroos, 1988)のことである。SRは企業の利潤にとって大きな影響を与える可能性を持っている。SRに関する先行研究では、SRのモデルや理論や変数などが研究されてい るが、SRの規模(リソースレベル、以下RL)と種類によって今後の再訪意欲や口コミなど顧客の行動がどう変化するのかという点に着目した研究は見られなかった。よって、本研究ではSRのRLと種類を独立変数とし、顧客の満足度とSR体験後の再訪意欲、SR体験に関する口コミを従属変数として関係性を検証した。
調査方法は、SRのRLと種類を変えたシナリオを質問紙にて評価してもらった。シナリオを実際に起こるSRに近づけるため、まず予備調査にて自由記述で過去に体験したSRについて聞いた。予備調査では24人の大学熊から42件のSR事例を収集した。収集できた事例の業種は飲食店が多く、サービスの失敗の種類は『サービス提供が遅い/利用できないもの」と「提供されたサービスが注文と違うもの」が多かった。SRの種類は『謝罪態度」と「品物での補償」が多かった。この結果を元にSRのシナリオを作成し、本調査としてサービスの失敗への不満度とSRへの満足度、SR体験後の再訪意欲、SRを口コミする対象と口コミする状況を回答してもらった。SRのRLは3段階(低、中、高)設定した。謝罪態度のRLは『悪びれないj「ふつう」「礼儀正しい」、補償のRLは「何もしない」「本来のサービスの再提供」『サービス再提供十クーポン」とした。また、サービスの失敗の種類によって違いが出ることを防ぐため、サービスの失敗の種類を「注文と違うサービスの提供」『サービス提供が遅い」の2種類設定した。
本調査は大学生224人を対象とした。結果は、全体的にはSRを行っても再訪意欲は減少するということになった。サービスの失敗の種類をみると「注文と違うサービスの提供」のほうが「サービス提供が遅い』よりもSR後の満足度は高くなるが、再訪意欲・口コミに は影響しなかった。SRの種類を見ると、謝罪態度よりも品物での補償のほうがSR満足度への影響が大きかった。しかし謝罪態度は中・高RLで再訪意欲・口コミに差が見られなかった。一方品物での補償は、RLが上がるにつれ再訪意欲も上昇し、口コミ行動が増えた。
今回の調査では、謝罪態度は中.高RLではあまり差がなく、品物での補償のほうがSRのRLを変えた時に満足度・SR後の再訪意欲.nコミに大きな影響が出るという結果になった。今後の方向性は、SRのRLをより定量的に定義する、よりRLを多くして変化を見る、あるいは変数をより広くする、などが考えられる。