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インフォーマルコミュニケーションにおける共感の作用

吉田 麻里(2012年度卒)

コミュニケーションは社会に関わっていく上で欠かせないものである。 近年、メディアなどの発達や社会の変化により、コミュニケーションのかたちが多様化してきている。その中でも、インフォーマルコミュニケーションの重要性が認識されている。インフォーマルコミュニケーションとは、「組織や集団内で行われる,非公式かつ偶発的なコミュニケーション、職場における雑談などのこと」と定義される。組織におけるインフォーマルコミュニケーションは、「組織のフォーマルな階層構造と調和し、組織全体の目標を達成するための不可欠な要素」となっている。先行研究では、インフォーマル空間を作ったり、思い出により共感を喚起して、インフォーマルコミュニケーションを促進しようとするものがあった。しかしこれらの研究では、会話の量は測られていたが、質については測られていなかった。そこで本研究では、インフォーマルコミュニケーションにおける共感に着目し、その作用を質・量両方の側面から検証することを目的とした。

研究は以下の手順で行った。まず、共感を喚起する要素についての調査を13人に対して行った。4つの情動(喜び、悲しみ、怒り、恐怖)を伴う架空の人物紹介文を読んでもらって、どの情動を含む紹介文に最も共感できるかを聞いた。また、この調査では事前に共感性についてのアンケートも行った。調査の結果、恐怖を伴う紹介文が最も共感を喚起することが分かった。この結果を実験に利用することとした。

次に、調査の結果を踏まえて実験参加者12人を集め、会話実験を行った。調査で明らかになった共感を促進するテーマ(怖い思いをした体験)について話してもらう組と、共感を促進しないテーマ(中学高校の先生)について話してもらう組に分け、実験を実施した。会話は初めに自己紹介を2分、その後指定したテーマについて13分の、合計15分で行ってもらった。この実験では、会話データの分析の他に、会話後の会話満足度などを聞いた。

実験で得られたデータを分析した結果、以下のことが分かった。共感を促進した組では、そうでない組よりも発話数が多くなっていた。また、共感を促進するテーマについて話してもらった組では、発話の末尾に「~です・ます」といった丁寧な言葉が使われる傾向にあった。

今後の方向性として、先行研究で提案されていたようなインフォーマル空間に、本研究で用いたような質的な視点を取り入れることで、より自然なかたちでのインフォーマルコミュニケーションの性質を、質・量両方の観点から明らかにしていくことが考えられる。


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