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比較表作成支援システムの開発

有田 隆幸(2013年度卒)

今日、web上での情報検索は日常的になってきている。情報検索行動には、目的などが明白である時に行われる参照型情報検索と卒業研究のテーマを探すといった目的などが明白でない時に行われる探索型情報検索の2種類ある。探索型情報検索の目的の1つに複数の対象物を「比較」することがある。web上で特によく見られるのが比較表である。典型的な比較表とは、比べたい対象と共通する属性を軸に構成したものである。また、比較表は選択する意思決定をするタスクに影響を与えると考えられる。このように比較表は便利な一方で、web上に存在しないトピックの比較表をユーザ自ら作成する必要があり、手間がかかる。比較表作成を支援してくれるシステムは何種類か存在するが、どのシステムもユーザの情報要求があいまいである時には比較対象や比較属性を入力することが難しいという欠点がある。本研究の目的は、web上の比較表の作成を支援するシステムを構築することと、比較表が先にあげた意思決定のタスクに影響を与えるのか調査を行うことである。

本研究では、システムを構築するにあたって、ユーザの視点に立って設計を行う手法であるUCD(User Centered Design)という手法を用いた。UCDの流れに従い、自らの経験などからシナリオを作成し最終的にアイデアを考え、システムに実装した。システムは、webアプリケーションとして開発した。システムの構築は、比較表のトピックに関連するキーワードをユーザが入力することで比較対象となりうる候補語をシステムが提示し、ユーザに表に追加する対象語を選択してもらい、次に属性の候補語をシステムが提示し、ユーザに表に追加したい属性を選択してもらい、そして表の内容を埋めてもらう。これらの繰り返しを行うことで表を作成していくシステムである。システムを評価するために行った被験者実験では、「Google検索とExcelを用いてもらう」条件Ⅰと「本研究で構築したシステムを主に用いてもらう」条件Ⅱで、比較表のトピックを変え各条件で 1 回ずつ実際に比較表を作成してもらった。作業後、被験者にはアンケートに回答してもらった。

アンケートの結果から、「比較表作成段階の比較対象を選択する段階」と「表の内容を入力する段階」で条件Ⅱの方が条件Ⅰよりも優れていると評価された。また、条件Ⅱで作成された比較表の属性数は、条件Ⅰで作成したものより多くなることも明らかになった。

比較表が意思決定のタスクに影響を与えるかどうかを立証することはできなかったが、実験の結果をうけてシステムの改善案を8つ提案した。

今後の方向性としては、システムの改善案を実装し、UCDの流れに従い、再び被験者実験を行う。そして、システムの評価とともに、意思決定タスクへの影響調査を行うことを考えている。


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