カーソル移動分析を基にした情報検索における迷いの検出
樋口琴美(2013年度卒)
我々の日常生活において、何かを探すとき、その手立てとしてインターネットを利用することは一般的になっており、検索エンジンは主要な役割を担っている。しかしながら検索エンジンを使って情報を探す際、必ずしも目的の情報にたどり着くことは容易とはいえない。そのような状況において、Kuhlthau (1993)は検索エンジンにおける人々の情報探索行動を第1段階から第6段階へと分け、段階が進むにつれて必要な情報を確定していく過程とその過程それぞれにおける感情を示した情報探索(ISP)モデルを定義した。ISPモデルには不確定性、すなわち「迷い」があり、その「迷い」を検出することは適応力のあるシステム開発にとって重要である。そこで本研究では和英翻訳課題の「迷い」を検出した先行研究をもとに、マウスのカーソルによる往復回数に着目し、人々の主な情報探索行動であるNavigationalタスクとInformationalタスクから情報探索のクエリ形成時における「迷い」を検出することを目的とする。
実験は、1トピックの中にそれぞれInformationalタスクとNavigationalタスクを2つずつ入れ、それを6トピック行うので計24回の情報探索をやってもらった。手順としては、はじめにストーリーとそのストーリーに対する質問、その質問の答えを探す際に使うクエリが書かれた紙を被験者に渡し、検索結果を見る前にそのクエリで検索した結果を簡単に予想してもらう。予想できなくても良しとし、何となくでも思い浮かんだらそのクエリで検索した検索結果の画面キャプチャを見てもらい、より良いと思われる質問に対する答えが見つかるような新たなクエリを検索結果一覧ページを見ながら考えてもらった。また、1つのタスクが終わるごとに事後アンケートにも記入してもらった。
分析の結果、Informational タスクのほうが Navigational タスクよりも往復回数はやや多かったがあまり差はでなかった。またカーソルの往復回数とそれぞれのタスク(Navigational・Informational タスク、迷いあり・なしに設定したタスク)には相関がないことが示されたが、一方で2つの属性を組み合わせた(Navigationalの迷いあり・なし、Informational の迷いあり・なし)において、Navigationalの迷いありのタスクでは「どのキーワードが一番良いのか判断できなかった」と「自分が考えたキーワードは良い結果を生むと思わない」というそれぞれの迷いの要素があるとき、カーソルの往復回数は少ないということがわかった。
今後の方向性として、デバイスを視線追跡装置に変えて同じ実験条件で視線の動きを比べることで、Navigational の迷いありのタスクでなぜ上記の迷いの要素があるときにカーソルの往復回数が少ないのか調べることができる。また、本研究の結果とも比べることでカーソルと視線の関係もみることができると考える。