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情報機器の切り替えに関する行動分析

小板橋 優(2015年度卒)

近年、人々が日々生活で使用する情報通信機器(デバイス)はデスクトップ型PCに留まらず、スマートフォン、タブレット端末、無線LANを通じてWEBに接続できるゲーム機など、様々なものがある。我々はこれらのデバイスを複数所持し、時間、場所、用途に合わせて切り替えながら用いている。このような現状において、複数のデバイスを断続的に使用する状況を考慮してデバイスの特徴を理解する事は、今後新規デバイスやデバイス間を結び付けるシステムを開発する際に大きな助けとなると考えられる。しかし、先行研究として行われた調査(Wong, 2013、Montanez, 2014)は、実際の切り替えのログのみで考察を重ねた量的な研究であり、デバイスの使用者がデバイス間を切り替える文脈についての知見は憶測にとどまっており、より理解を深めるために質的研究のフォローアップが必要であると指摘されている。

そこで、本研究は、現代における主要なデバイスの切り替えがどのように行われるか、またその切り替え要因は何かを解明することを目的とした。本研究により、デバイスの切り替え行動や、各デバイス間の関係性や特徴をユーザーがどのように捉えているのかをより詳細に理解することが可能であると考えた。

この目的を達成するために、本研究ではデバイスの切り替えを正確に観察するために実験室環境下でPC、スマートフォン、タブレット端末の3種類のデバイス切り替えに着目した実験を行った。日常生活上でデバイスの切り替えが起こりうると想定された複数のタスクを課し、その環境下で発生した切り替え行動分析と、回顧法による聞き取り調査を筑波大学の大学生、大学院生21人を対象に行った。

実験結果より、PCとタブレット端末の2種間ではデバイスを切り替えながら同時並行で作業を行うことで連携が深くなることが実験参加者の行動分析から判明した。これらの傾向は、実験参加者のPCへの親しみとキーボードなど入力装置が充実していることによる操作性、タブレット端末の移動性と閲覧のしやすさが複合して発生していた。また、スマートフォンでの切り替えの要因の大半は今まで行っていた作業そのものを別のデバイスに移行させるものであった。これは、持ち運びとWEB接続の2点に特化した印象が実験参加者の意識に根強く存在しているため、複数のデバイスが存在した際には、他のデバイス間との結びつきが弱く、タスクに対する期待も小さいということが回顧法の調査にて判明した。

今後は、情報通信機器として今後さらなる発展が見込まれるTVや、WEB接続可能なゲーム機コンソールなど、本実験で取り扱うことのなかった他のデバイスを含めた関係性を幅広い年齢層や性別などを考慮した上で調査し、より広い範囲での複数デバイスの関係性や切り替えの動機を網羅することが求められていると考えられる。


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