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検索モダリティとバーティカル選択の関係 -音声入力とタイピング入力の比較-

根本 美由樹(2019年度卒)

近年、デバイスの多様化により、音声入力による検索が増加している。音声入出力を前提としたスマートスピーカーなども普及し、音声検索に最適化された検索システムの需要は今後も高まっていくと推測される。音声やテキストなど、人間が情報伝達を行う際の様式のことをモダリティという。先行研究から、検索モダリティによってユーザの検索行動が異なることが明らかとなった。しかし、現行の検索システムの多くは、入力モダリティによって出力である検索結果をほとんど変化させていない。そこで本研究では、最適なマルチモーダル検索システムを提案するため、ユーザの検索タスクと入力モダリティの関係を明らかにすることを目的とした。

まず、アンケートで「入力モダリティ」と「トピック(クエリ)」を回答者に提示し、その指定された条件で検索をする際の状況と、検索意図として検索結果の種類のカテゴライズであるバーティカルの重要度を回答してもらった。その後、アンケート結果を各変数を用いて分類し、モダリティ選択に関連があるかを検証した。また、トピックごとにモダリティ選択の影響を検索意図・状況の2要素で判別し、50トピックを4つのタイプに分類した。

分析の結果、全体の6割のトピックで検索タスクによってモダリティが異なることが判明した。その中でも全体の12% のトピックに、検索時の検索意図と状況の両方に差異が見られ、両方がモダリティ選択に関係していた。また、26%は検索意図のみ、22%は状況のみに差異があった。よって、検索意図と状況ともに、独立してモダリティ選択に関係していると推測される。

検索意図と状況の両方がモダリティに関係しているトピックでは、音声入力の場合、より緊急性の高い検索になる傾向が見られた。検索意図のみがモダリティ選択に関係しているトピックは、出力に視聴覚メディアが含まれると予想されるトピックなどに多く、状況のみがモダリティ選択に関係しているトピックは、食品などのショッピングの対象となるトピックで多かった。また、その他のモダリティ間に差異のないと判別されたトピックであっても、検索意図の曖昧性や状況のプライベート性の変化によって、モダリティ間に差異が生じる可能性があると考えられる。さらに、モダリティの選択には検索時のユーザの同行者が特に強く影響している可能性が示された。音声モダリティにはそれによって発せられた情報が周囲の人にも伝わるという特性があるため、このような結果になったと推測される。

これらの結果から、検索システムは検索意図がモダリティに関係するトピックに対しては、バーティカルの順序を入れ替えた検索結果を表示し、状況がモダリティに関係するトピックに対しては、例えばユーザが一目でわかるように検索結果の提示方法を工夫するなど、ユーザインタフェースの適応が有効だと考えられる。


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