長距離移動車内における周辺情報に基づいた話題推薦と音声会話検索
船越 大輝(2020年度卒)
近年、スマートフォンなどインターネット接続可能なモバイル端末の普及により、旅行中においても情報検索を行う人が増加している。旅行には移動がつきものだが、移動手段としてレンタカーを含めた乗用車を選択する人は多い。しかし、旅行で見知らぬ土地へ赴く場合、通りかかった場所においてユーザの興味の対象となるような地点である POI(Point of Interest)が存在しても、周辺地域への理解が浅い状況では検索の手掛かりが少ないことから、POI に対する情報ニーズが満たされにくい。
そこで、本研究では長距離移動中の車内において、周辺の地理的情報に基づいた話題推薦を行い、推薦した情報を起点としてユーザとの音声会話検索によって詳細情報の検索も可能な車内情報アクセスシステムの実現を目指した。 提案システムは、スマートスピーカーのAmazon Echoのアプリケーションとして開発を行った。また、クラウドAPIを利用することで、常に最新の情報へアクセスできるように工夫した。位置情報を読み込んで周辺のPOI検索を行うシステムと、検索されたPOIに関するWikipedia ページの概要を取得するシステムを経て、スマートスピーカーのアプリケーションが結果を音声で出力する設計でシステムを開発した。ユーザはスマートスピーカーに搭載された音声会話検索機能を利用して、詳細な検索を行うこともできる。
システムの開発後、5名の実験参加者を対象に評価実験を行った。実験ではまずユーザの運転経験に関する調査を行った。次に、事前に選定したルートに沿って自動車で走行しながら車内から撮影した前方風景の映像をユーザに見てもらいながら、その走行ルートに対応する位置情報を用いて情報推薦システムを動作させた。30 分の運転風景の中でシステムによって推薦された4つのPOIについて、事前知識、意外性、話題性、情報ニーズの満足度の観点で評価を行ってもらった。さらに、情報推薦時の通知ランプによる通知や、音声会話検索機能などシステム全体の使用感についても回答してもらった。
実験の結果、情報推薦を行う際に通知を挟んでもユーザは不快にならないこと、運転中の情報検索の際に音声会話検索が有用であることが確認できた。また、未知の POI についての情報推薦をされたときにユーザが意外性を感じやすいことが明らかになった。 今後の方向性としては、速度や進行方向など現在位置情報以外も考慮に入れた推薦を行うことや、利用シーンを拡大した評価を行うことが考えられる。また、提案システムが運転操作に及ぼす影響を調査することも必要である。