インタラクティブ情報検索によるSNSプロフィール文作成支援
長瀬 幸翼(2020年度卒)
Social Networking Service (SNS)において、プロフィール文はユーザを印象づける重要な情報である。しかしながら、筆者が行った事前調査(n=2,376)によると、 Twitter におけるプロフィール文(最大140字)の平均文字数は 40(中央値 29 )文字であり、充実したプロフィール文を作成しているユーザは多くないことがわかる。そのような背景をふまえて、本研究では SNS におけるプロフィール文作成を支援するシステムを開発・評価した。
提案システムでは、プロフィール文を動的に検索する機能を実装することで、自分と似た他ユーザのプロフィール文の内容や書き方を参考にできるようにした。似たプロフィール文を参考にするという考え方は、社会心理学分野の観察学習の理論から着想を得た。 提案システムは一般的なWebサービスとして実装した。具体的には、ユーザがページのフォーム上にプロフィール文の一部を入力すると、関連した他のユーザのプロフィール文を自動で検索して隣に表示する。ユーザは検索結果を参考に自分のプロフィール文を書き直したり、特に参考になるプロフィール文を画面に固定表示したりすることができる。
提案システムの評価として、ランク付け性能の評価と、被験者実験による有用性の評価を行った。ランク付け性能の評価では、既存の評価用データセットに適当なものがなかったことから、独自のものを以下の手順で構築した。まず、架空の SNS ユーザのペルソナを 20 人分考え、それぞれについてプロフィール文を作成した。これをクエリとし、各クエリについて、検索対象のプロフィール文の適合性判定を筆者が人手で行った。この評価用データセットを用いて、提案システムの検索機能の MAP、nDCG@k のスコアを求めた。なお、ランキングアルゴリズムには Okapi BM25 と文書分散表現のクエリ・文書間のコサイン類似度を組み合わせたものを使用した。結果、スコアはいずれも0.5を上回り、提案システムが一定程度の検索性能を持っていることがわかった。被験者実験では、筑波大学の学類生 16 名を対象に提案システムを評価した。被験者らには、自動検索機能を 使う / 使わない で 8 名ずつ 2 つのグループに分かれ、大学での交流用アカウントという設定でプロフィール文を作成してもらった。分析の結果、提案システムを使ってプロフィール文を作成するグループは、使わないグループよりも、作成されたプロフィール文の情報量が多いことが明らかとなった。また、提案システムを使ったグループの被験者らは、事前に想定していたよりも多くのトピックをプロフィール文に書く傾向があったことも確認された。
今後の方向性として、提案システムを用いて作成されたプロフィール文が、 SNS 上で実際に使われたとき効果的であるか検証を行いたい。また、被験者やテストコレクションをより多様化させ、さらに正確な評価結果を得る必要がある。