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食材の在庫を考慮した民主的主菜決定プロセス

小野寺 晃汰(2021年度卒)

毎日,夕食の献立を考えることに,苦労し,悩む人が多い.悩む要因として,(1)食卓を囲む人達の間で食べたい料理に齟齬が生まれる「食卓を囲む人達のニーズ」,(2)使い切りたい食材を用いた献立を考えることが煩わしい「冷蔵庫食材の在庫の使い切り」,(3)献立を考えて,料理を作る際に料理作成者の調理道具やスキルが足りない「料理作成者の作成可能な料理」の3つ等があげられる.本研究は「今晩,何食べたいか問題」を以上の3つの下位問題で構成されていると仮定し,これらの解決を目的としたシステムを構築しその評価を実施した.

提案システムは4つのサブシステムで構成される.まず,1つ目は食材在庫確認システムである.このシステムは料理作成者が冷蔵庫の中身を確認し,その日に使いたい食材を決め,その食材の名称をクエリとして,レシピデータベース内を検索する.そして,そのレシピを料理作成者に推薦し適合レシピとしてレシピを選択するシステムである.このレシピデータベースは楽天レシピのAPIを利用して構築した.2つ目は投票システムである.このシステムは,選択したレシピを適合レシピとして,順々に料理作成者と食卓を囲む人達に提示する.提示された適合レシピを見て,投票を行うシステムである.3つ目は集計システムである.このシステムは投票結果を受け取り,集計して適合レシピをランク付けする.4つ目は結果通知システムである.このシステムはランク付けされたレシピを全員に通知する.

システムの開発後,10の家庭,合計33名を対象に評価実験を行った.実験の内容としては,システムを利用してもらい,本実験に関するアンケートに回答してもらった.実験の結果,投票システムによって「食卓を囲む人達のニーズ」を満たす効果があることがわかった.しかし,「冷蔵庫の食材の在庫」に関しては,食材在庫の入力情報の少なさとレシピ全容の情報提示のタイミングという要因によって解決できたとは言えず,改善の余地が残った.「料理作成者の作成可能な料理」に関しては,否定的な回答と肯定的な回答がほぼ同数であったことや,本実験が意図している方法と異なった意図で適合レシピの選定したことで,明確な答えは得ることはできなかった.

今後の方向性としては,適合レシピの選定において,料理作成者が考慮する範囲をどの程度拡大するかを検討することや,レシピの全容を提示する最適なタイミングを見い出すことがある.また,本研究では,冷蔵庫の在庫食材をチャットボット経由で検索したが,IoT(Internet of Things)や画像認識処理を利用して,冷蔵庫の在庫食材を自動的に把握することで,より容易に,より正確に在庫食材を把握することができる可能性があると考えられる.


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