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化粧水クチコミにおける内外的要因が読み手の評価に与える影響

井本 叡(2022年度卒)

近年、多くの化粧品が店頭に並んでおり、人々は目的に合わせて化粧品を購入している。中でも、基礎化粧品は肌に合わない商品を使用すると肌トラブルを起こす可能性があるため、人々はクチコミサイトを用いて肌に合う商品を選んでいる。しかし、基礎化粧品と肌の相性は各個人で異なり、購買前に閲覧者と投稿者の肌の類似度を判断することは困難である。先行研究には閲覧者にクチコミや商品を推薦するシステムの研究があるが、クチコミの表現方法の自由度が高いため、推薦精度の向上に限界があると考察した。そこで、本研究では推薦システムの基となるクチコミに焦点を当て、閲覧者にとって有益なクチコミの生成を目的として、クチコミ作成の指示内容の違いがクチコミ閲覧者に与える影響を調査した。

提案する指示内容は、コミュニケーションの枠組みの有用性を規定する類似性・信用性・専門性の3つの尺度を用いて作成した。類似性と専門性は、Simonsらが定義した目的関連的な類似性と両者が「情報源の能力に関する信頼」要素であることを踏まえて、外的要因と内的要因を記載できる指示内容にした。信用性は、濱野らがクチコミの信憑性評価軸として作成した6つの軸の内、肌に合うか否かの判断と関係のない軸とクチコミの表現を制限する軸を省いた4つを用いた。クチコミ対象は、基礎化粧品の中で最も商品数と種類が多い化粧水を選択した。実験設計は、提案手法と既存手法(アットコスメ)を用いて、「提示された指示内容に基づいてクチコミを記載する」実験と「記載されたクチコミを評価する」実験を段階的に、それぞれ被験者間で行った。クチコミ記載実験では、クチコミ投稿経験がない20歳以上の女子学生20名を集め、1ヶ月以上の使用経験がある化粧水について170~230字でクチコミを記載してもらった。クチコミ評価実験では、クラウドソーシングサービスで20代の女性28人を集め、クチコミ記載実験で得たクチコミを評価してもらった。

評価実験で得たクチコミ評価スコアに対して、プロフィール分析と統計的分析を行ったところ、提案手法によって生成されたクチコミは既存手法よりも閲覧者に及ぼす類似性のスコアが高く、その差は有意で、効果量も大きかった。有用性においては、提案手法は既存手法よりも読み手に及ぼす有用性のスコアが高く、その差は有意で、効果量は中程度であった。信用性・専門性・購買意向に関しては、指示内容の違いによる効果は観測されなかった。これは、指示内容の信用性に関する表現と評価項目の購買意向に関する表現が曖昧であったため、指示内容の効果が一部の範囲において観測されなかったと考えられる。以上の結果から、クチコミ作成時に外的要因と内的要因を含める指示を与えることで、生成されたクチコミの閲覧者に対する類似性と有用性が向上できることが分かった。今後は、基礎化粧品における他カテゴリーへの応用が期待される。


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