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題材表示形式の違いが小論文作成における文章産出困難感に与える影響

三上 真(2022年度卒)

近年、大学生の文章力低下が指摘されている。文章を書くことは学生生活におけるレポート、論文執筆などにおいて必要不可欠である。また、大学受験などといった場面でも文章を書くことというのは重要な要素となっている。文章力低下の要因として(1)若者の約半数がレポートや論文、作文といった長い文章や論理的な文章を書くことを苦手としていること、(2)近年の読書時間の減少、インターネットにおける動画閲覧時間の増加による文章を読む機会が減少していることなどが指摘されている。そこで本研究では、小論文の題材の表示形式(文章や動画)の違いが文章産出困難感にどのような影響を与えるかを検証した。

本研究の目的を達成するために筑波大学の学部生、大学院生28人を対象とした実験を行った。実験はPCを用いてzoom上で行われた。被験者はまず特性的な文章産出困難感および、800字以上の文章を書く習慣、一日平均の読書時間、動画閲覧時間、文章を書くことが好きかどうかを測る質問紙に回答した。その後、6つのトピック(社会、科学、国際、スポーツ、経済、文化)に関する小論文形式の題材の中から、最も小論文が書きやすいと感じるものを順位付けし、上位二つを選択し小論文課題として取り組んだ。小論文に取り組む際、初めに文章(画像付き)もしくは動画の形式の小論文の題材を閲覧してもらった。閲覧後、題材をどれだけ理解したと感じているか回答してもらった。その後、題材に応じた小論文課題を冒頭5分間のみ取り組んだ。その後、課題固有の文章産出困難感尺度に回答した。本実験は被験者内実験のため、文章(画像付き)と動画の2つの形式の小論文題材に異なる順序で取り組んでもらった。最後に、小論文の題材の形式のどちらが小論文を書きやすかったかを回答し、実験の振り返りを自由記述してもらった。文章(画像付き)の小論文題材はPDF、動画の小論文題材はYoutube上の動画を用いた。

実験の結果、表示形式ごとの課題固有の文章産出困難感、課題固有の文章産出困難感尺度の4因子(「全体構成」「表現選択」、「読み手意識」、「アイディア」)や書かれた文字数に有意差は見られなかった。しかしながら、文章産出困難感尺度における「アイディア」因子において動画題材のほうが困難感が低いという有意傾向が見られた。また、文章表現の統一性確認作業において文章題材のほうが困難感が低い可能性が示唆された。以上のことより、書き手の複雑な文章産出困難性を減少させるには、複数のメディアを併用することが効果的である可能性が示唆された。

本研究では題材の理解難度設定が適切でなかった可能性がある。そのため、今後の方向性としては,題材の難易度を引き上げ、小論文作成のみならず、文章産出における課題や題材の表示形式の違いによる課題固有の文章産出困難感への影響を明らかにできる可能性があると考える。


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