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面接方式が就職面接における自己呈示戦略と自己開示度に与える影響

堀 愛美(2023年度卒)

2020年に新型コロナウイルスの蔓延が起こったことで、人々のコミュニケーションの形は大きく変化した。その中でもZoomなどによるビデオ通話型でのオンラインコミュニケーションの広がりはめざましく、就職活動でもオンラインで採用面接が行われるようになった。感染症対策が薄れてきた現在においても、時間や場所を選ばない等のメリットからオンライン面接を行う企業がいる一方で、相手の雰囲気がつかみにくい等のコミュニケーションにおけるデメリットも報告されている。そこで本研究では、対面面接とオンライン面接における応募者の行動を比較することで、面接形式の違いが自己呈示戦略と自己開示度に与える影響を調べた。具体的には「対面面接の方がオンライン面接よりも積極さの戦略を取る割合が高くなる」、「オンライン面接では対面面接よりも自己開示度が低くなる」という2つの仮説を立てて検証を行った。

実験は対面面接とオンライン面接の2条件を被験者間計画で行った。被験者は国立T大学の大学生・大学院生36名(男性18名、女性18名)で、両条件ともに男女比を1:1に設定した。被験者には、まず初めに自身の就職面接経験等を問う「就職面接に関する意識調査アンケート」に回答していただき、その後30分間の面接実験を行った。面接で使用した質問は全被験者に対して同じ質問となっている。次に面接終了後に自身の面接を評価する「面接に関する自己評価アンケート」に回答していただいた。2つの質問紙は先行研究をもとに被験者の自己呈示戦略を調査する内容になっている。また面接の様子は録画・録音を行い分析に使用した。

面接実験をもとに質問紙内容分析・表情分析・行動分析・発話内容分析を行った結果、質問紙内容分析と行動分析の結果から面接形式による有意な差が見られた。質問紙内容分析では、オンライン面接よりも対面面接のほうが積極さ戦略を取る傾向が高いことが分かった。行動分析では、オンライン面接よりも対面面接のほうが面接中のうなずきを多く行う傾向があることが分かった。また発話内容分析では、対面面接のほうがオンライン面接よりも自己開示を積極的に行っているのではないかと考えられるような結果がみられた。以上の結果から「対面面接の方がオンライン面接よりも積極さの戦略を取る割合が高くなる」という仮説が意識と行動(うなずき)の観点からは認められたが、表情の調査からは認められなかった。一方「オンライン面接では対面面接よりも自己開示度が低くなる」という仮説については面接形式の違いによる有意差が認められなかった。研究の今後の方向性として、本研究で認められた面接形式による応募者の行動の違いが面接官の評価に与える影響を調査することで、面接形式別に適した自己呈示戦略を見出せる可能性がある。


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