コンテンツにスキップ

日本人の政治的イデオロギーとSNSにおける情報行動との関連性

鈴木 香帆(2023年度卒)

近年、エコーチェンバー現象が注目されている。これはSNSの発達によって、見たいものだけを見て欲しい情報だけを入手できるようになった社会の弊害である。エコーチェンバーは、政治的な場で目されるようになった。政治というトピックは、SNSが登場する以前から、同じ政治的な意見を持つ者どうしで人々を集結させてきたからである。先行研究では、海外における右翼・左翼のSNSのユーザに着目し、ユーザ自身の政治的なイデオロギーSNSにおける投稿や引用、いいね!や返信などの投稿への反応に表れていると解明された。しかし、日本のユーザに対しては未解明であることが多く、特に日本人は海外と比較して端な政治的イデオロギーを持つ人が少ないという日本人特有の政治的な立場を反映している研究はほとんど見られない。そこで本研究では日本人特有の政治的イデオロギーはSNSにおける情報行動に表れるという仮説を立て、その仮説を検証することを本研究の目的とした。

具体的な研究の方針としては、X(旧Twitter)を利用するユーザを対象にオンライン上で質問紙調査を行い、その結果とユーザのXへの投稿との関連性を検証した。質問紙調査の質問項目は2022年の「朝日新聞ボートマッチ」の質問を参考にした。質問紙調査では462人に質問紙調査を依頼し、16 人の回答が得られた。この結果をもとにユーザを階層的クラスタリングによって4 つにクラスタ分けした。このクラスタ分けでクラスタをCO01、CO02、CO03、CO04とした。さらに、この16人のユーザがフォローしているユーザをフォローユーザとし、ユーザ16名とフォローユーザ26名の投稿を分析した。

その結果、CO01は集団的自衛権と経済については消極的な姿勢を持つクラスタであるが課税強化、対ロシア外交、夫婦別姓、同性婚、外国人の永住権というトピックでは主張が一致しなかったクラスタ、CO02は公共事業と消費税率の引き下げについては積極的な姿勢を見せるクラスタであり、その一方で財政再建についても支持するクラスタである。CO03は武力に関しては消極的な姿勢な見せるクラスタである。CO04は社会福祉と雇用については否定的な意見を持つクラスタであり、それ以外では様々な意見を持つクラスタである。クラスタ内の投稿を、Python を用いることによりトピックモデルを抽出し、そのトピックを分析することで投稿と政治的なイデオロギーの関連性が見いだされた。

結果として4つのクラスタのうちCO01、CO02、CO03は質問紙の回答傾向と投稿内容に関連が見られ、CO04では関連は見ないが政治的な意見が投稿に多く見られた。よって、日本人特有の政治的イデオロギーの傾向がSNSの情報行動についても観測されることが分かった。今後の研究ではさらに多くのユーザを対象に、SNS における広範囲での調査が期待される。


卒業論文に戻る